チムニーズ館の秘密 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 早川書房 (2004年2月20日発売)
3.69
  • (24)
  • (40)
  • (49)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 363
感想 : 45
4

最初数ページの会話がちょっと退屈に感じたが、アフリカはジンバブエで出会った旧友に主人公のアンソニーが仕事を頼まれるあたりからおもしろくなり、ロンドンに移ってからは謎の手紙の女性ヴァージニアに会う、そこに死体が、そして鍵となるチムニーズ屋敷に向かう、そこでまたもや殺人事件、しかも殺されたのはバルカンのさる国・ヘルツォスオスロヴァキアの王子だった、と短い時間に立て続けに事件が起きて、現実感はあまり感じない話ながらどんどん惹きこまれた。

事件の背景にはそのバルカンの国の石油採掘権をめぐりアメリカ、イギリスの政界、経済界がからみ、さらにチムニーズ館の歴史ある宝石をめぐる盗賊もからむ。登場人物は主人公アンソニーは爽やかで颯爽とした見眼もいい好男子、として描かれ、そこに20代後半の才色兼備の貴婦人、そして館のおきゃんな娘バンドルが登場。クリスティの冒険物の役者がそろっている。バトル警視が登場。登場人物ほとんどが裏の顔があるというあたり、最後まで飽きない。

井家上隆幸氏の解説ではヘルツォスロバキアを「ユーゴスラビア」に変えてみると、書かれた当時のセルビアの状況とだぶるという。ヘルツォスロバキアの描写で人口の半分は山賊などの表現もあるが、1925年という第一次大戦後、さらに混迷しているヨーロッパにクリスティは敏感だったのか、と感じる。クリスティは35歳、まだまだ人生始ったばかりの時期なのだ。

「バルカン超特急」や「海外特派員」を見たすぐ後読んだので、ヒッチコックあたり映画化してたらおもしろかったのではないか、と思った。

これでクリスティの犯罪ものの長編短編は読み終わった。あとは戯曲。
「七つの時計」1929はチムニーズ館が舞台。そこの娘としてバンドルが出てくる。

1925発表
2004.2.15発行 図書館

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・ミステリー 海外(英米)
感想投稿日 : 2020年1月26日
読了日 : 2020年1月26日
本棚登録日 : 2020年1月24日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする