初の短編集でデビュー作の「犯罪」(2009)から9年。12作を収録。「犯罪」よりはいくらか柔らかい雰囲気もただようが、やはり硬質でぎっしり詰まっていて、読んでるとつぶされそう。
「参審員」
アメリカや最近の日本での陪審員になった若い女性。その女性の生真面目な成育歴と、参審することになった裁判が描かれる。この裁判は、夫がことのほか細かく、ポストイットに、「すすいでおけ」「これはクリーニングする」など家庭内の事すべてに指図する。妻に暴力をふるい過去に4回有罪判決を受けている。・・陪審員の女性は妻に孤独な自分を投影し、泣いてしまう。被告の夫は拘留を解かれるが・・・ ああ、もう何たる・・ 「犯罪」に載っていた「フェーナー氏」とちょっと似ているが、こちらの方が結末は奈落。
「逆さ」
後ろから銃で撃たれた男。その事件の被疑者の国選弁護人になった弁護士の目線で進む。ある証拠が「逆さ」だ、と過去に弁護したゴロツキのヤセルから言われる。これは普通のトリックミステリーみたいだ。・・しかし最後に、どうしてわかったんだ? と聞かれた時の「ヤボなこと言うな」というヤセルの言葉の意味は?
「友人」
子供のころの友人リヒャルト。リヒャルトの人生の出来ごとが語られるが、静かだが、ゆったりと気持ちが沈殿するようだ。私は刑事弁護士になって20年、とあるので自身の回想もはいっているのか。
2018発表
2019.6.14初版 図書館
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
本・ミステリー 海外(英米以外)
- 感想投稿日 : 2022年10月13日
- 読了日 : 2022年10月12日
- 本棚登録日 : 2022年10月13日
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