あなたは、ストレスについて簡潔に表すとしたら、どちらの表現がしっくりきますか?
a. ストレスは健康に悪いから、なるべく避けたりして管理する必要がある。
b. ストレスは役に立つから、なるべく受け入れて、うまく付き合っていく必要がある。
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本書のタイトルを受けて、この質問をされたら、わけ知り顔で「b!」と答える人もいるだろうが、a.bどちらを答えた人でも、「よりよく生きること」「自己をコントロールしたい」思いのある人には一読の価値ある一冊である。
1998年にアメリカの3万人の成人を対象に行われた調査結果が、本書の発端になっている。
「強度のストレスを受け」且つ「ストレスを悪いものと認識していた」グループの死亡リスクは、
「強度のストレスをもっていない」グループより43%も高まっていた。
が、「強度のストレスを受け」ながらも「ストレスを悪いものと認識していなかった」グループにはなぜか死亡リスクの上昇は見られなかった、という。
ストレスそのものが悪なのではない。ストレスをどう脳が受け止めるかで、私たちの体への影響は違ってくる。新しい知見である。
様々な研究結果が、従来の「ストレスは悪!」「ストレスは避けるべき」からの転換を示してきて、著者も当初戸惑いを覚える。
その後試行錯誤している様子も本書では描かれていて好印象。
本の形をとっているが、いうなれば「ストレスの新しい科学」新しい認識の視座であり、「マインドセット」の集中講座ともいえる。
私も個人的に思うところと共感があり、読むべきタイミングに読めた感慨が深い。
問いに対し、考え、答えながら、思考を重ね自分を知る。
ストレスは必ずしも忌避するものではなく、その本質を知ることで、見えてくる新しい世界がある。
経験の話になるが、過去強い圧迫を受けながらも、なぜか大きな達成感を覚えた瞬間が多くの人にあると思う。あの充実感の正体と、ストレスと上手く付き合う術について、本書では解きほぐす努力がされている。
複数のエクササイズを通じて、旧来のストレス観を脱していく取り組み。まだまだストレスをとりまく研究には未知がありそうだが、現時点でやれるかぎりのことをしたいものである。本書も反復を心がけたい
- 感想投稿日 : 2020年8月29日
- 読了日 : 2020年8月29日
- 本棚登録日 : 2020年8月29日
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