関ヶ原合戦に関する最近の新説を丁寧に覆していく。小山評定はなかった→あった、関ヶ原合戦は開始すぐに終了→夜明けから昼頃まで続いた、直江状は偽書→実在、など。ただ、ポイントはスタンスの違い。さまざまな新説は、史料を読めてなかったり、二次史料を一律に排したり、よくできた話は史実ではないと切り捨てた地点に立脚してるとし、二次史料も史実をあらわしてることがある、よくできた話だからと切り捨てないとして立論。ただ、この二次史料は真実らしい、というさじ加減は専門家でないと判断つかない感触で、一読者には是非を判断できない。ある説をとるとらないは、そのさじ加減に左右される印象を持った。西軍二段階決起説は著者の立論の肝で、鮮やかな手つきの論証と見受けられた。最終的には、家康に協調するスタンスをとりつつ、他方では秀頼と豊臣家に対する忠誠心にゆるぎない豊臣系武将こそが、東軍の主戦力であるというところに関ヶ原合戦の壮大なパラドックスが存していた、それが徳川幕藩体制260年に大きな刻印を残した、と。また自分のKindleに入れていた白峰旬編「関ヶ原大乱、本当の勝者」、渡邊大門「関ヶ原合戦は「作り話」だったのか 一次史料が語る天下分け目の真実 」とあらためて見比べると違いも際立っておもしろかった。
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- 感想投稿日 : 2024年4月7日
- 読了日 : 2024年4月2日
- 本棚登録日 : 2024年3月2日
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