城 夢想と現実のモニュメント―渋澤龍彦コレクション   河出文庫 (河出文庫 し 1-38 澁澤龍彦コレクション)

著者 :
  • 河出書房新社 (2001年10月1日発売)
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感想 : 6

澁澤龍彦「オブジェを求めて」の巻末に広告がのってて、気になり。最近この手のきっかけが多い。ユリイカの空中庭園特集の広告からisの失われた書物特集、開高健「パニック・裸の王様」の表紙裏から「歩く影たち」など。◆わりとざっくりと、澁澤龍彦が城をめぐりあるいたり、書物のなかから思い起こしたりしつつ、大好きな信長を語ったり、サド侯爵を語ったり、といった体裁の一冊。安土城をみた帰りに、あやしげなバーに入ったら、おそろしく太った女の子三人に鴨だとばかりに囲まれて、注文もしないおつまみやらサラダやらが並んで、これから茶漬けを食べにいかない?と誘われ、ほうほうの体で逃げ出してきて、「そうだよなあ。やっぱり廃墟の方がいいよ。幻の城がいちばんだよ。」と著者がつぶやくシーンはユーモラスこの上ない。◆「おそらく城とは、何よりもまず、専制君主の夢想のための場所なのだ。しかし、この場合、専制君主は必ずしも現実の専制君主である必要はあるまい、というのが私の意見である。」(p.84)著者もその掉尾につらなる、と。巻末の龍子夫人のエッセイも味わい深く。それまで出不精で旅にでたがらなかった著者が42歳で一念発起、夫人とヨーロッパ旅行へ、三島由紀夫らがお見送りに、その年の冬に三島は割腹自殺をとげ、あれは別れを告げにきていたのだと思ったり、方向音痴、時間音痴、お金音痴で、ホテルのなかで迷ったり、その国の紙幣を節目しても、こっちのお札のほうがきれいだねえ、なんて言ってて、ひとり旅はとても無理だったろう、と。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年3月9日
読了日 : 2023年3月8日
本棚登録日 : 2023年3月9日

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