突然の雨に見舞われ、コンビニで安物のビニール傘を買う。
傘の見た目や機能性なんてどうでもいい。どうせその場しのぎの傘なんだから。
また別のビニール傘を買ったっていいんだから。
他人との関わり方が、そんなビニール傘に似ている。
なんとなく誰かと話がしたい。相手は別に誰でもいい。でも自分の話をするのは億劫だから、相手の話を聞くだけがいい。
大阪を舞台にした、寂寥感たっぷりの物語。
毎日をただ淡々と機械的に過ごす若者たちがとてもリアル。
雨が降るとすぐに水浸しになるという湿地帯の大阪。でも大阪住みの若者たちの人間関係はドライなんやな。
途方もない切なさ、寂しさがひたひたと伝わってきて、何度も胸が締め付けられた。
岸さんはこれが3作品目。男女の会話が相変わらずいい。カギカッコがない会話の方が読み手の気持ちに無断でズカズカ入ってくるのかも。勝手に入り込んでずっとそのまま心の中に居座る感じがクセになる。
寂しさ漂う余韻に暫し包まれる。
もう一作の『背中の月』
こちらは妻を病で亡くした男の話。
喪失感がすごく伝わってきて痛々しい。
この人、いつかは立ち直れるんだろうか。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
岸政彦
- 感想投稿日 : 2021年4月25日
- 読了日 : 2021年4月25日
- 本棚登録日 : 2021年4月25日
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