何者

著者 :
  • 新潮社 (2012年11月30日発売)
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「私たちはもう、たったひとり、自分だけで、自分の人生を見つめなきゃいけない。一緒に線路の先を見てくれる人はもう、いなくなったんだよ。進路を考えてくれる学校の先生だっていないし、私たちはもう、私たちを産んでくれたときの両親に近い年齢になってる。もう、育ててもらうなんていう考え方ではいられない」(P.214)

「十点でも二十点でもいいから、自分の中から出しなよ。自分の中から出さないと、点数さえつかないんだから。これから目指すことをきれいな言葉でアピールするんじゃなくて、これまでやってきたことをみんなに見てもらいなよ。自分とは違う場所を見てる誰かの目線の先に、自分の中のものを置かなきゃ。何度も言うよ。そうでもしないともう、見てもらえないんだよ、私たちは。百点になるまで何かを煮詰めてそれを表現したって、あなたのことをあなたと同じように見ている人はもういないんだって」(P.216)

「自分は自分にしかなれない。痛くてカッコ悪い今の自分を、理想の自分に近づけることしかできない。みんなそれをわかってるから、痛くてカッコ悪くたってがんばるんだよ。カッコ悪い姿のままあがくんだよ。だから私だって、カッコ悪い自分のままインターンしたり、海外ボランティアしたり、名刺作ったりするんだよ」(P.264)

これから、大学生になり、社会に出る時に誰もが経験すること。これまで、他の誰かになりたいと何度思ったことか。あの子だったら良かったのに。なんで、あの子なんだろう。と自分のできないこと、持ってないものを持っている子のことを羨んだりした。だけど、どれだけ羨んだって、自分は自分を生きることしかできない。この作品は、それを痛いほど教えてくれる。自分を生きることしか出来ないのなら、自分が変わるしかないし、自分が欲しいものは自分で努力して手に入れるしかない。失敗したら、誰のせいでもなく、自分のせい。ここまできたら、自分を生きることしかできない自分を精一杯肯定して生きていくしかないのかもしれない。例え、カッコ悪くて、情けなくても。
もうすぐ、一人暮らしや、大学生になるという環境の変化にすごく不安を感じている私の背中を前向きに、押してくれる作品だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年2月24日
読了日 : 2022年2月23日
本棚登録日 : 2022年2月19日

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