利己的な遺伝子 40周年記念版

  • 紀伊國屋書店 (2018年2月15日発売)
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感想 : 84

2022.02.26
昨年『自己組織化と進化の理論』を読んで以来、生物学についての興味を一層強くしたので、名著である本書を手に取った。
正直、読んだ後で世界の見え方が変わる。遺伝子の目線で生物の進化を説明することの明快さ。そして分かりやすさ。

血縁関係者間の遺伝子共有度の考え方、蟻は受精卵は全てメスになることなど、自然の凄さ、これらがプログラムされているという事実は驚愕だ。

そして、進化的に安定な戦略(ESS)。生存戦略を単純なパターン化して説明する明快さ。面白い。

なにより最も勉強になったのは、「囚人のジレンマ」を例にESSを説明する部分。
ある環境におけるESSは「やられたらやり返す」型である。これは妬みを持ち続けるのではなく、一度やり返したら過去を忘れてあげるのがポイント、という事実がかなり刺さった。人間は妬みを持ち続けてしまいがちで、これが泥沼化する要因である。「やられたらやり返す。でも一度きりだ」というのはこれからの人生で役に立ちそう。
この「囚人のジレンマ」、私とあなたの間でパイを奪い合うゲームではなく、胴元からいくらポイントを得るかというゲームであるというのが、青天の霹靂というか、これまでの対峙の概念をひっくり返される。離婚の調停が例として語られたように、泥沼化することで利得を得る第三者がいる。目の前の相手に囚われて、相手からいかに奪い取るかに思考を持っていかれがちだが、本当にすべきことは相手と協力して胴元からいかに奪い取れるかということなのだ。

この本を読み終わる頃にロシアによるウクライナ侵攻が始まってしまった。攻められてしまった時には、ESSではやり返さないといけないということになる。頭で分かっていても悲しい決断になる。
戦争とは本当に残酷である。
色々考えさせられる。
#戦争反対

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年5月21日
読了日 : 2022年2月27日
本棚登録日 : 2022年5月21日

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