なるほどの対話 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2005年8月28日発売)
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本棚登録 : 961
感想 : 97
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今、立ち止まって悩む以外に何も手のつかない人におすすめしたい本だった。
吉本さんも、河合さんも、現実との折り合いをつけられずに悩む若者たちに心を寄せて、何かの役に立たなければ生きていてはいけないのではないか、という焦燥感に身を焼かれている彼らに、立ち止まってもいい、起き上がれなくてもいい、と、ただ、肯定の言葉をくれる。
このことが、私にとって、本当に生きる希望になった。
特に印象に残っているのは、眠りについてのお二人の言葉。
吉本さんは、高校時代は3年間、ほとんど眠って過ごされたそう。
とにかくたくさん眠ってしまう、強烈な眠気に襲われている、若い人たちがいることに関して、河合さんが、その人の内界で起こっていることと、外界で起こっているかけ離れているため拒絶するより仕方がないため、と話していた。
自分が普段考えていることと、世間の大きな差には、いまだに悩まされて続け、折り合いがつけられずにいるため、とても親近感があった。
また、そうした気持ちでいる人たちが他にもたくさんいる、と知ることは、何より、自分の抱える孤独感を、ふと、緩ませるきっかけになる。
当事者同士が生身で繋がることはなかなかハードルが高く、難しくとも、理解者たちの本を通じて、その存在を知ることができ、とても、嬉しかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年8月8日
読了日 : 2023年8月1日
本棚登録日 : 2023年7月30日

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