エレンディラ (ちくま文庫)

  • 筑摩書房 (1988年12月1日発売)
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感想 : 225
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最初の数ページを読んで読み方がわからず、数ヶ月放置してたのを、ガルシア・マルケスがマジック・リアリズムの代表的な作家であることや、私の好きな映画監督が多数生まれているメキシコ出身であることを理解したのちに再度手に取ったら、スラスラ読めるようになった!
なお、巻末の解説に、ガルシア=マルケスが、祖母から昔話、民話を聞かされていたという話があり、それを最初に知っていればもっと腑に落ちて読めただろうなと思った。
どんな世界でも、民話では、動物も喋れば、妖怪や、妖精や、人間と動物の中間のような存在も当たり前に現れ、普通の生活に入り混じってくる。
翼の生えた汚い天使も、蟹が部屋に入り込むことも、海から吹く薔薇の匂いの風も、流れ着く美しい死体も、そして、あくどくて強力な魔女のような祖母に囚われ途方もない人数を相手に売春するエレンディラもまた、日常の中でふと祖母が話して聞かせる、強烈な残滓を染み付けて消えていく話の一つと考えれば、なんとも自然に受け入れられる。
実際、こんなにも魔法に近くはなくても、平成生まれの私にとって、祖母から聞く、戦時に掃除に駆り出されて、空襲後に散らばった屍肉を拾い集めた話や、本土復帰以前の島から密航して本州に渡った話などは、ほとんどおとぎ話に近いものだった。
とはいえ、全編通して感じる吹き荒れる熱風や、エレンディラの話に満ち満ちている女性の奔出する力には、南米という土地から湧き立つ異国情緒も存分に感じた。
私は、レイプや、売春の描写が極端に苦手なのだが、それでも読後嫌な気持ちにならなかったのは、民話に近いからこその普遍性があることと、エレンディラの自然を超えるほどの力強い出奔の様子があまりにも爽快だからだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外小説
感想投稿日 : 2022年9月24日
読了日 : 2022年9月23日
本棚登録日 : 2022年9月23日

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