続氷点(上) (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2012年7月25日発売)
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感想 : 70
5

小説を愉しんだ後に思う場合が在る。作中の最終盤辺りの経過の後、「如何いうようになってしまう?」ということが凄く気になる場合が在って、「こういうように?」と勝手に考えを巡らせてしまう場合も在る。
『氷点』という小説を読んだ。不幸な事件が契機で、一家は重大な秘密を密かに抱え込んでしまう。その秘密に関るヒロインは、その秘密を突き付けられる羽目に陥り、最終盤で騒動を起こしてしまう。やがて一家の秘密の真相を知る人物が、その真相を伝える。そういう具合で「ヒロインの陽子は如何なる?」という場面で物語が幕を引くのが『氷点』であった。
作者の三浦綾子の中で、『氷点』は発表されている「ヒロインの陽子は如何なる?」という場面で完結していたようである。が、小説が大好評を博し、三浦綾子が次々と作品を発表するようになって行く中で「『氷点』の陽子のその後?」という声は高まったようである。色々な人達が随分と、その件を話題にしていたらしい。
そういうことで、取材を重ねた上で登場した「続篇」である。
『氷点』は「昭和30年代の終盤頃」という時期迄の物語である。対して『続 氷点』は「昭和40年代前半頃」という時期の物語である。
『氷点』に登場の啓造、夏枝、徹、陽子という「辻口家の人達」は『続 氷点』でも引き続き主要な人物達ということになる。そして『氷点』に登場した、辻口家の人達と交流が在る人達も引き続き登場する。その他方で、『続 氷点』には新たな人物達も登場する。
上巻は、『氷点』の最終盤での騒動の直後という情況から物語が起こる。そして時間が少し経過し、『続 氷点』の鍵になる「三井家の人達」が登場するようになる。
下巻では、血の繋がらない兄の徹と、兄の友人ということで知り合って親しくなった北原との間で揺れていた陽子、そして「三井家の人達」を巡る挿話が多くなる。
『氷点』は陽子が成長する過程の子ども時代が相当に入るのに対し、『続 氷点』は陽子が既に高校生や高校卒業後、或いは大学生である。それ故に「陽子の目線」という部分が多い。
『氷点』の最終盤で陽子は高校2年であるが、『続 氷点』の中では大学生になっている。数年経っているということになる。そういった事情を踏まえ、<見本林>が在って、辻口邸が建っていることになっている神楽や旭川の街での挿話に加え、札幌での挿話も少し多くなり、加えて作中人物達が旅行に出るような場面も在る。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 三浦綾子 作品
感想投稿日 : 2023年11月8日
読了日 : 2023年11月8日
本棚登録日 : 2023年11月8日

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