掟上今日子の備忘録

著者 :
  • 講談社 (2014年10月15日発売)
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本棚登録 : 4010
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1日ごとに記憶をリセットされる「忘却探偵」を名乗る少女と、厄災に巻き込まれる宿命を背負った就職浪人の男の物語。いつもの西尾維新作品と比較すると、西尾維新節とでも言うべき語り口調はややなりを潜めているせいか、かなりリーダビリティが高く、初心者でも取っつきやすい。探偵役である掟上今日子の記憶忘却設定そのものはさほど目新しくはなく、どちらかといえば探偵という属性との組み合わせのほうにその妙がある。リセットがそのまま探偵としての守秘義務に繋がっている点や、日を跨いで捜査を継続できないデメリットなどは面白い。ただ単にデメリットとしてその設定を扱うだけでなく、逆に記憶をリセットすることによる視座の変化や先入観の訂正という、いわば「同一人物の別人」とでもいうべき大仰な振り回しこそがこの設定の真骨頂であろう。それを支えるだけの、煽り方、もといアジテーションは西尾維新の得意とする所であり、対比的なキャラの立ち位置付けなども上手く、煙に巻かれた独特の読後感はこの作者ならではだろう。初シリーズにしては読みやすいのでかなりお勧め。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ
感想投稿日 : 2019年5月27日
読了日 : 2014年10月24日
本棚登録日 : 2019年5月27日

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