六番目の小夜子 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2001年1月30日発売)
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毎日暑いので、ちょっと涼もうとホラー小説のつもりで読み始めた。
昔テレビ番組で放映されていた当時は興味があったのだが、結局見ることができず、記憶の彼方にあった一冊。ほぼ20年越しに全貌を知ることとなった。

恩田陸さんのデビュー作。割と自由な校風である地方の公立進学高校。学校祭やクラスの懇親会など、自分の高校時代を思い出し、とても懐かしくなった。なかでも、「うたごえ喫茶みぞぐち」が発案され、実行に移される場面は個人的に気に入っている。「マジかよ」という内容を本当に実現してしまう高校生の爆発力を感じ取った。

筆者の描く通り、同じ年代の少年少女をかき集めて、校舎という箱の中に閉じ込めて、同じ服装をさせて過ごさせるのは「異質」なことである。濃密な時間を一緒に過ごして楽しむからこそ、一気に受験モードに切り替え、大学入試を乗り切ることができるのだろう。異質な空間が生み出すゆえのエネルギーである。

そして、異質空間だからこそ生まれる「伝説」とか「怪談」がつきもの。それに便乗して楽しむ者もいれば、憑りつかれてしまい人生を棒に振る学生もいるわけである。こういった怪談を簡単に信じ込んで、気がおかしくなったり、暴挙に出てしまうような、ピュアで脆い心理、思い込んだら迷わず突き進むパワーといった、浮き沈みの激しい高校生たちの様子をしっかり描いている。

それにしても、高校生の頃の私は、秋や沙世子と比べて、序盤で存在が消されてしまうようなザコキャラだったなあと思う。個人的には最初に登場した「彼女」が気の毒で仕方ない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年8月14日
読了日 : 2023年8月11日
本棚登録日 : 2023年8月11日

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