合併でできた地方都市「ゆめの」、希望に満ちているのは、名ばかり
娯楽施設は、ショッピングセンターのドリームタウンだけ、駅前の商店街はお決まりのシャッター街
閉塞感漂うこの街に暮らす5人の群像劇
県からこの市に出向してきたケースワーカーの相原友則
東京の大学に進学しこの町を出ることを夢見ている高校2年の久保史恵
暴走族上がりで詐欺まがいの商品のセールスマン加藤裕也
スーパーの保安員をしながら新興宗教にすがる孤独な48歳、堀部妙子
親の地盤を引き継ぐ市会議員だが県議会に打って出るつもりの山本順一
各自それなりの夢を抱いているが、なぜか空回り、悪い方へ悪い方へと回り出す5人の人生
このパターンは、前作の「最悪」「邪魔」と同じだ
5人はほとんど交錯することなく、並行して5人の物語が
進んでいくが、それなりに5人の人生の転がりようと心理描写がおもしろかった
5人がそれぞれ追い詰められ、希望の糸口も見出せないまま、車を走らせ、凍てついたドリームタウン下の交差点で前代未聞の玉突き衝突!
ええーっ! 奥田さん、こんな片付け方あります??
読者諸君、この後は、どうぞご自由に物語を作ってくださいということか
どんよりと曇った冬の寒空、肌を切られるような凍てつく寒さと閉塞感漂う街の描写が巧みで、読んでいて身につまされた
奥田さんの小説って、おちゃらけた伊良部一郎シリーズは別として、人生があまりうまく行っていない人を題材にした作品が多いなと今までの奥田作品を思い返していた
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年7月10日
- 読了日 : 2021年7月10日
- 本棚登録日 : 2021年7月5日
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