文字禍

著者 :
  • ALLVD (2012年9月27日発売)
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本棚登録 : 212
感想 : 37
5

人に薦められて読んでみたが、考えれば考えるほど大変面白い読み物だと思った。
この物語の面白さはどこにある?と聞かれて答えるとしたら個人的にはこう答えるだろう。
①文字の精霊に関する調査や考えの滑稽さ
②歴史と文字に関する考察の下りの納得感
③オチがちゃんとついていて面白い
④「馬鹿な話だなぁ、この研究者、『文字の精霊』なんていう幻を信じるからこんなことになってしまったんだ」と読み終わったこの本を笑って投げる私達が実は、「文字の精霊」に毒されている可能性があること
特に④についてはこの本の一番面白い所で、まさにこの本を読んでいる瞬間にも私達は謎のパラレルワールドに投げ込まれるというか、「文字の精霊」が存在していて今もまさに貴方を毒している可能性が急に出現するという所が味わい深い。おそらく多くの人は「馬鹿らしい」と文字の精霊の副作用について鼻で笑うだろうが、まさにその行為が「文字の精霊」によって副作用を受けているせいではないだろうか?本当に「文字の精霊」が存在せず、世の中の様々なことが「文字の精霊」のでせいではないと言い切れるだろうか?…ここは悪魔の証明になるので実は完全にはできず、私達はこの可能性を捨てきれることがないのである。しかし私達はおそらく信じない。それは何故?…と考えていくと深みに嵌っていくようで物凄い読了感である。
個人的にはとても好きな物語であった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年8月9日
読了日 : 2020年8月9日
本棚登録日 : 2020年8月9日

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