伝奇集 (岩波文庫 赤 792-1)

  • 岩波書店 (1993年11月16日発売)
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再読。ボルヘスが織りなす、魔法・物語・教訓の三つの面からなる透明体の三角柱がまるで自分の背筋であるかのように芸術的感覚が働き、じりじりと胸に訴えてきた、そんな感想を書きたい。
だが、三つの面による移動性の光線が射し込み、まぶしく曖昧で、具体と抽象が色々に奇妙によれ混じったルービックキューブに似た物を夢中でこねくり回し、魂を奪われている間に、最終頁の最終行に到達している。そして以前よりも、愛してやまない頁の枚数は確実に増え、わたしの内に水晶が震えるときのような唸りを呼び起こす。 我、時を全速力で逆走してゆく。
《2021.03.15》

伝奇集とは、奇蹟を叶える方法を伝えようと編集された存続する絵。
どのように十代の水水しい感受性を維持するか。人はAからB、BからCと手を広げるように、十、二十、三十と歳を流し、この調子でだんだん熱情を流し、楽しく学ぶ術も流してしまうのかもしれない。追求すべきは逆行的に時間軸を歪める方法。Aの底の底への絞り込みと繰り返しで相違を焼却。我の体を熱情で燃やすようにAの底の人間の真の記憶に語らせる。基本的知識を身につけるための情報を必要最小限の物に絞り、同じ物を読み貫き、自分の血肉とする以外に奇蹟を叶える方法はない。
《2019.04.06》

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: スペイン・ポルトガル
感想投稿日 : 2021年3月15日
読了日 : 2021年3月15日
本棚登録日 : 2021年3月15日

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