ベトナムに行く前に読むべきではない、ベトナム戦争を取材した日本人作家のルポルタージュ。
戦記といっても主役は兵でなく、戦火に巻き込まれたベトナム国民。政治情勢や歴史背景などの説明はほとんどされないが、それは街、工場、寺院、農村、漁村、ジャングル、どこにいたとしても戦争に関係させられたベトナム人も一緒だったのかもしれない。主義主張どころか目的も持たされず、ただ生活のために戦争の慣性に従うしかない人々の視点からは、ただこの嵐が過ぎ去ることを願う以外の術がなかったことを思い知らされる。
もちろんこれは筆者が感じ取った印象と経験でしかないから、歴史の一つの側面であるただの陰鬱な物語だ。だが、どんな歴史の背景にも、こんな生活があるのかもしれないという想像力は、誰もが持っておかなくてはならないだろう。
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- 感想投稿日 : 2015年1月17日
- 読了日 : 2015年1月17日
- 本棚登録日 : 2015年1月17日
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