古典的名作・サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』へのオマージュ?と思える本作タイトル。
でも「オロロ畑」って何? 興味と期待が膨らみます。荻原浩さん1997年のデビュー作(小説すばる新人賞)で、元コピーライター彷彿ものでした。
過疎化で村の存続が危ぶまれる牛穴村青年団が、起死回生の村おこしを計画してタッグを組んだのは、潰れそうな弱小広告会社で‥。
詐欺まがいの広告会社の提案に、藁にもすがる思いで同意し、一大騒動を巻き起こします。これらの面々が織り成すドタバタ・賑やかさが愉快です。
軽妙さを含めた方言の使用、田舎の名産・文化などの設定も巧みで、登場人物一人一人のキャラも立っていて魅力的です。
そして著者は、田舎の青年や弱小広告社の面々を、頻繁におちょくった描き方をしていますが、決して貶めず、嫌味のない温かさを感じます。
まさかのカップルも誕生し、最後はいろんな人が純真さ・誠実さに救い救われたんですね。
1951年出版の本家『ライ麦畑〜』では、高校を退学した青年が、世の中の欺瞞へ鬱屈した嫌悪を投げかけ、その孤独を妹に救われる内容でした。
オリジナルをリスペクトしてそのモチーフを取り入れ、その上で独自の趣向をこらしている点が敬意の表れと思いました。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年12月3日
- 読了日 : 2023年12月3日
- 本棚登録日 : 2023年12月3日
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