オロロ畑でつかまえて (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2001年10月19日発売)
3.40
  • (118)
  • (305)
  • (583)
  • (70)
  • (18)
本棚登録 : 2862
感想 : 303
3

 古典的名作・サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』へのオマージュ?と思える本作タイトル。
 でも「オロロ畑」って何? 興味と期待が膨らみます。荻原浩さん1997年のデビュー作(小説すばる新人賞)で、元コピーライター彷彿ものでした。

 過疎化で村の存続が危ぶまれる牛穴村青年団が、起死回生の村おこしを計画してタッグを組んだのは、潰れそうな弱小広告会社で‥。
 詐欺まがいの広告会社の提案に、藁にもすがる思いで同意し、一大騒動を巻き起こします。これらの面々が織り成すドタバタ・賑やかさが愉快です。

 軽妙さを含めた方言の使用、田舎の名産・文化などの設定も巧みで、登場人物一人一人のキャラも立っていて魅力的です。
 そして著者は、田舎の青年や弱小広告社の面々を、頻繁におちょくった描き方をしていますが、決して貶めず、嫌味のない温かさを感じます。
 まさかのカップルも誕生し、最後はいろんな人が純真さ・誠実さに救い救われたんですね。

 1951年出版の本家『ライ麦畑〜』では、高校を退学した青年が、世の中の欺瞞へ鬱屈した嫌悪を投げかけ、その孤独を妹に救われる内容でした。
 オリジナルをリスペクトしてそのモチーフを取り入れ、その上で独自の趣向をこらしている点が敬意の表れと思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年12月3日
読了日 : 2023年12月3日
本棚登録日 : 2023年12月3日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする