本日午後、東京靖国神社の桜の標本木が十一輪開花し、気象台職員の方が手話を交えて開花宣言をしていました。いよいよ春本番ですね。
というわけで、本書タイトルは『さくら』です。西加奈子さん20代の初期作品(本作が第二小説)で、初読みでした。
本書は、ちょっと厄介だけど幸せな長谷川一家の大河物語です。父さん、母さん、兄ちゃん(一)、僕(薫)、妹(美貴)、サクラ(犬)や恋人などが、僕の視点で描かれていきます。
一人一人が丹念に描かれ、その視点はあくまでも肯定的で、絶望感や閉塞感を包み込むような温かさを感じます。家族だからという理由を超えたものがあるような気がします。そして、犬のサクラがとってもいい緩衝材以上の存在です。
文章の端々に、僕の視点を通した西さんの多様性への理解の深さがあるような気がしました。西さん自身、テヘラン→カイロ→大阪という来歴もあるためでしょうか、欠点や弱音などマイナス面を否定せず、認める姿勢を感じます。
生きることへの肯定は、「生まれてきてくれて、ありがとう」の言葉に尽きますね。
生きることの意味や人と人との関係性、成長過程で必ず直面する葛藤や模索‥。幸せから暗転、そして再生への軌跡が緻密に描かれた作品でした。この未来へのエネルギーを感じる本作で、若き西加奈子さんが大きな支持を得たことに頷けました。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年3月14日
- 読了日 : 2023年3月14日
- 本棚登録日 : 2023年3月14日
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