2003年刊行、伊坂幸太郎さんの初期作品です。
多くの方が「伊坂ワールド」として実感している、個性的なキャラクター、軽快な語り口、機知、洗練されたユーモア感覚、洒落た引用や比喩等は、もうこの頃から全開です。
ただ本作は、ミステリーとしての醍醐味を前面に打ち出さず、悲しい過去を抱えながら生きる家族にスポットを当てた物語、と言える気がしました。
内容としては、とても痛々しく深刻で、私・泉水の弟・春の生い立ちも生きていくことも、全てが苦悩に満ちたものです(ネタバレで物語の根幹なので伏せます)。
しかし、流石の伊坂さん。作中の『本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ』のセリフの通り、軽快な会話と展開のテンポのよさで、切なさと面白さのバランスが見事に両立しているようです。
抗えない重力はあっても、観る人に大変さを感じさせず、軽々と空中を飛ぶサーカスのピエロ。しかも泣き笑いの表情でユーモアを振りまきながら‥。
この本作を完全に集約する表題は、読後にその意味を理解するほど、秀逸さを実感しました。
純真さ、切なさ、そして可笑しさと愛おしさにあふれた物語でした。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年11月12日
- 読了日 : 2023年11月12日
- 本棚登録日 : 2023年11月12日
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