重力ピエロ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2006年6月28日発売)
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本棚登録 : 55425
感想 : 4257
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 2003年刊行、伊坂幸太郎さんの初期作品です。
 多くの方が「伊坂ワールド」として実感している、個性的なキャラクター、軽快な語り口、機知、洗練されたユーモア感覚、洒落た引用や比喩等は、もうこの頃から全開です。

 ただ本作は、ミステリーとしての醍醐味を前面に打ち出さず、悲しい過去を抱えながら生きる家族にスポットを当てた物語、と言える気がしました。

 内容としては、とても痛々しく深刻で、私・泉水の弟・春の生い立ちも生きていくことも、全てが苦悩に満ちたものです(ネタバレで物語の根幹なので伏せます)。
 しかし、流石の伊坂さん。作中の『本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ』のセリフの通り、軽快な会話と展開のテンポのよさで、切なさと面白さのバランスが見事に両立しているようです。

 抗えない重力はあっても、観る人に大変さを感じさせず、軽々と空中を飛ぶサーカスのピエロ。しかも泣き笑いの表情でユーモアを振りまきながら‥。
 この本作を完全に集約する表題は、読後にその意味を理解するほど、秀逸さを実感しました。

 純真さ、切なさ、そして可笑しさと愛おしさにあふれた物語でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年11月12日
読了日 : 2023年11月12日
本棚登録日 : 2023年11月12日

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