自分語りになってしまうかなと思うが、この本を読んで私は祖父母の住む島を思った。私は全く違う場所で育ったのだが、生まれてから祖父母の住むその南の島を毎年訪れている。訪れるたびに海を見に行き、その美しさと、全てを受け入れ流してくれる寛大さに感謝している。それでもそこにずっと住んできた祖父母や親戚は、昔はもっと海が綺麗だった。珊瑚もたくさんあったと決まって言うのだ。わたしは失われてしまったその美しさを想像することしかできない。いつか自分も見れたらとも思うが、それはまだ自分が生きていられないほどずっとずっと先になるだろうとも思う。
私は今年で23歳になる。23年間欠かさず訪れてきたその島で、昔は山羊がいて、覗くと中におじさんが必ずいた後ろの家は、今や山羊はいなくなり、中には誰の姿もなく、壊れた玄関や家具がのぞき、たまに野良猫が姿を見せるだけになった。年に一度しか会わない親戚も、その時の長さが会っただけでもわかるようになってきた。中にはもう会えない人たちもいる。
時間は不可逆で、決していい時ばかりに留まることはできないのだと、この小説を読んでより強く思った。だから私も愛を持って祖父母のいる島の地面を踏み締めようと思う。いつかそこに花が咲くように。そしてできるだけ祖父母との思い出をつくって、抱えきれない花束を持っていってもらえるようにしよう。そう思った。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2023年2月28日
- 読了日 : 2023年3月15日
- 本棚登録日 : 2023年2月27日
みんなの感想をみる