僕は内田樹という知性を信頼している。
膨大な知識・鋭い感性・身体性に裏打ちされた独自の視点を持ちつつ、さらに自分より若い世代や異なる分野の専門家に対してオープンマインドな姿勢を保ち続けている人だからだ。
自分はもうすぐ40歳を迎える人間(内田樹氏から見ればまだまだ若造)だが、既に自分より遥かに若い人たちの感性やスピードについていけず、徐々の頭が徐々に柔軟性を失いつつように感じ始めている。
そういう自分の老化のようなものを自覚し始めた今だからこそ、内田樹氏の開放性というか、しなやかさに尊敬の念を禁じ得ない。
本書「しょぼい生活革命」は、そんな敬愛する内田樹氏が、自身の娘よりも若い30歳の青年(えらいてんちょう氏)と真正面から向かい合い、経済、政治、教育などについて、自分の感覚を頼りに率直に意見を語り合う本だ。
えらいてんちょう氏については、本書を通じて初めて知ることになったわけだが、内田樹氏が対談相手に選んだだけのことはある。
彼は単に若さに由来する溢れるエネルギーを頼りに影響力を拡大している若者とは一線を画す人物だと感じた。
えらいてんちょう氏の行動の一つ一つが、単なる衝動から来るものとは明らかに違う。
自らの経験と思索を元にした思想に裏付けされているように感じる。
こういう若者の行動は、状況が少し悪化し追い風が向かい風に変わったとしても、まわりの注目が落ち着き大多数の人に忘れられてしまったとしても、静かに着実に継続される。強靭な植物の根のように、地中に深く広く張り巡らされていく。
そして、まわりの人たちがふと思い出し、その人に再度注目した時には、すでにより強くより偉大な人物に成長している。
周りの人から見るとまるで変身してしまったかのように見えるが、本人からしてみれば日々着実に学んでいった結果に過ぎない。
えらいてんちょう氏はそういう人なのだろうという印象を受けた。
- 感想投稿日 : 2020年4月26日
- 本棚登録日 : 2020年4月26日
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