久しぶりに道尾さんらしい、練ったミステリーを読めた。
アンソロジー「蝦蟇倉市事件Ⅰ」に収録されていた「弓投げの崖を見てはいけない」を第一章に、続編三編を追加して作品として完成している。
アンソロジーを読んだ時は核心部分がぼやかされていたのでよく分からなかったが、この作品を読んでかなりスッキリした。
表紙の見返し部分に
第一章 「弓投げの崖を見てはいけない」死んだのは誰?
第二章 「その話を聞かせてはいけない」なぜ死んだの?
第三章 「絵の謎に気づいてはいけない」罪は誰のもの?
終章 「街の平和を信じてはいけない」…わかった?
とある。
道尾さんからのこの『読者への挑戦状』とも言えるテーマを念頭に、決して斜め読みなどせずにしっかり読むと面白い。
各章の最後のページに答えを導くような仕掛けがあるのも楽しい。
話の内容や文章の雰囲気としては重いのだが、終章でそれまでの話が繋がり謎がかなり明かされるところは面白い。
それでも先に『かなり』と書いたのは、全てが明示されているのではなく、読者の想像の余地を残している部分も結構あるからだ。
まあそこはそれぞれが妄想や想像を逞しくして、この一連の事件に筋道を描いてみるというのも一興ではないだろうか。
例えば動機、例えば語られていない人間関係、例えば過去。
あれこれ想像で補完していくと、よりホラーチックになったり、よりミステリアスになったり、センチメンタルになったり、それぞれの「蝦蟇倉市事件」が出来上がるかも知れない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ミステリー・名探偵
- 感想投稿日 : 2019年10月13日
- 読了日 : 2019年10月13日
- 本棚登録日 : 2019年10月13日
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