せきしろ氏と又吉直樹氏の俳句・俳文集。自由律で気儘に詠んだ2人の句を交互に掲載している。
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なかなかに面白かった。
ネガティブ、後ろ向き、そして溢れるペーソス。さらに又吉さんはそこに自虐的な味わいも醸し出しています。
気に入った句を書き留めておきます。
○せきしろさん
・目をあけていても仕方ないので閉じる
・手羽先をそこまでしか食べないのか
・雨と冷蔵庫の音に挟まれ寝る
・祖母が剥く果実線香の味
・醤油挿しを倒すまでは幸せだった
・素振りをしている人がいるから回り道をする
・あの猫は撥ねられるかもしれない
・こんなにも時計の音がきこえていたのか
○又吉さん
・二日前の蜜柑の皮が縮んでいる
・まだ眠れる可能性を探している朝
・万全だったら勝てたということにしたい
・ひげ剃りにも負けた
・早くも来世にかけている
・まだ何かに選ばれることを期待している
・カキフライがないなら来なかった
※「憂鬱な夜を救ってくれる本といる」は放哉の「寂しい寝る本がない」のオマージュだろうか。
時々挿入される俳文もよかった。その句に辿り着いた心情が十二分に伝わってきます。文中取り上げた句のみを書き留めておきます。
○せきしろさん
・風呂桶の中で膝ばかり見る
・病室に別人がいた
・雪が静かにしてくれている
○又吉さん
・五十メートル六秒だったという無意味
・みな車窓から虹を見ていた恐そうな人も
・便所目当ての百貨店だが買いもの顔を作る
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
俳句集
- 感想投稿日 : 2022年5月25日
- 読了日 : 2022年5月25日
- 本棚登録日 : 2022年5月25日
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