怪談 (光文社古典新訳文庫 Aハ 8-1)

  • 光文社 (2018年7月9日発売)
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感想 : 13
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読みやすく、面白い。
解説にもあるように、ほとんどは再話文学で、またこの本によって有名になって児童向けの怪談集などに収録されているために、幼い時分に読んだ記憶のあるものだったが、出典の明示されていない「かけひき」(解説ではリラダンの影響が指摘されているが)は日本的怪奇趣味に合理主義的なオチがポンとくっついているのが面白かった。

また、後半の「虫の研究」3編はそれぞれ味わいが異なる。「蝶」は日本の蝶を愛でる感性や逸話の多くが中国由来と考えられる、とことわりを入れつつも、蝶の登場する俳句などを列挙し、その詩心を賞賛する。「蚊」では墓に供えられた水から蚊が沸いて困るが「仏教では殺生を禁じている…」(そういえばそうだと膝を打った!) 「蟻」はアリの社会性をスペンサーの社会進化論に結びつけて論じる。社会進化論は帝国主義の正当化(西洋人が未開地域の文明化を果たしてやってるのだ!という考え方)と結びつくので、今日日評価されにくい思想だけれど、日本の滅びゆく近世と心中するような文章を書いた著者の目を通してみると、社会進化論をそう読む人もいたんだ…と感心する。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 933.6
感想投稿日 : 2024年2月15日
読了日 : 2024年2月15日
本棚登録日 : 2024年2月12日

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