薔薇の名前〈上〉

  • 東京創元社 (1990年2月18日発売)
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色んな読み方がある「開かれた」本のようだから、ある程度は難しいなと思わしきところはスルーしたって本筋は追えるが、老婆心的に(高校世界史レベルで拾える)事前に調べておけば"読み進めやすくなる知識"を以下に書いておきます。

・14世紀(中世後半)の欧州は(十字軍の失敗もあり)ローマ教皇の権威がぐらついた時代。教皇庁はフランスのアヴィニョンに置かれている。「教皇のバビロン捕囚」について調べておくとよい。
・神聖ローマ帝国(ドイツにある)と教皇は対立関係にある。イタリア(統一国家ではなく都市を単位に国家が乱立している)では教皇派・皇帝派が長らく争っている。「イタリア政策」について調べておくとよい。
・ルネサンスがフィレンツェにて先行的に始まった時代でもあり、作中でも『神曲』のダンテについて言及されている。なおダンテは先のローマ教皇と政治的に対立している。
・十字軍の盛んだった12世紀以降、イスラーム諸国の文献が欧州に輸入された。この事は自然科学の発達や、ギリシア哲学の「再発見」を促した。作中で「アクィーノのトマス」として度々言及されるトマス・アクィナスはアリストテレスの哲学と神学の調和を図った。同じく作中で言及されるオッカムのウィリアムも併せて「スコラ哲学」を調べておくとよい。
・作中に出てくる「修道会」のうち、ベネディクト修道会とクリュニー修道会は、14世紀時点ではそれなりに古参。探偵役のウィリアムが属するフランチェスコ会や異端審問に熱心とされたドミニコ会は「托鉢修道会」と呼ばれる。
・何度か出てくる「ソドムの罪」(ソドミー)とは、男性の同性愛のことで、旧約聖書でソドムの街が「みだらな行い」により神の怒りに触れ、滅ぼされた話に由来する。
・同じく何度か出てくる「黙示録」は、世界の終末について記載された新約聖書の章

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年8月10日
読了日 : 2023年8月1日
本棚登録日 : 2023年7月19日

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