2009年11月に放映されたNHKスペシャル「立花隆 思索ドキュメント がん 生と死の謎に挑む」をベースに作られた本(文庫化は2013年)。
つまり、本書の取材はいまから9年ほど前になされたものであり、日進月歩のがん治療の世界においては、情報が古くなっている部分もあるだろう。
しかし、がんという病気の本質に迫るという基本線においては、いまも十分に価値を持つ。優れた科学啓蒙書である。
NHKの看板番組たる「NHKスペシャル」は、お金とマンパワーを潤沢に注ぎ込んだ非常に厚い取材によって作られるから、それを元にした本にもよいものが多い。本書もしかり。
立花隆自身が膀胱がんの手術を経験し、自らの元妻や筑紫哲也ら、身近な人間をがんで亡くした経験が、本書の背景にある。ゆえに、立花の著作には珍しい「熱さ」を具えた本にもなっている。
もっとも、自らのがん手術体験を延々と綴った第二章(全二章立て)「僕はがんを手術した」は、やや冗長で退屈だが。
が、前半の第一章「がん 生と死の謎に挑む」(NHKスペシャルをベースにしたパート)は、がんの本質を手際よく概説した優れた内容だと思う。
途中で近藤誠の理論に半ば肯定的に言及しており、その点は首をかしげたけど。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
医療・健康
- 感想投稿日 : 2018年9月21日
- 読了日 : 2018年1月9日
- 本棚登録日 : 2018年9月21日
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