開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― (ハヤカワ文庫 JA ミ 6-4)

著者 :
  • 早川書房 (2013年9月5日発売)
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本棚登録 : 2626
感想 : 205

舞台は18世紀のロンドン。この時代のロンドンならではというべき(個人的には全然詳しくないので完全に感化された感もありますが)ミステリーを堪能した。序盤から不可解な謎が重なり、魅力的な登場人物たちによって解決されていく。これだけ書くととても普通なのだが、当時のロンドンの環境や暮らしぶり、身分、文化、医療の発達度合、そのあたりがとても想像しやすく描かれているため、読んでいるこちらは自然と物語の中に没入していく。登場人物たちがみな魅力的でどこかひと癖もふた癖もありそうなところも、グッと入り込んでしまう理由だろう。思いがけない結末は現代では許されないことなのだが、とても人間らしさを感じて咎める気にはならない。罰は社会が与えるのではなく、個人で受けるその覚悟に適正だと思いたい。それくらいこの時代の物語に魅了された。ただ、時代を遡って暮らしてみたくはないが。

人体を切開することに偏見があり、解剖学では遅れているイギリス。物語は妊婦の女性の解剖中に、犯罪捜査犯人逮捕係が解剖室に押しかけてくるところから始まる。立ち入られる前に訳あって屍体は暖炉の中に隠すのだが、話の末いざ隠した屍体を出してみると四肢のない屍体にすり変わっている。さらに顔が潰れた別の屍体まで発見される。その場の誰も知らない二体の屍体。ここから最後まで驚きと同調で存分に楽しめる。続編も楽しみになったし、参考文献にある『解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯』も読みたくなって読後に購入してしまった。こちらも読んでみよう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年12月2日
読了日 : 2023年12月2日
本棚登録日 : 2023年12月2日

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