伊坂幸太郎さんの作品は本作が初読みだった。
いきなり長編だったので少し尻込みしたものの、読み始めたら首相殺しの濡れ衣という設定と、青柳雅春という主人公の人間性にはまり、どんどんのめり込んでしまった。
マスコミ報道がいかに視聴率目的で操られているか、人の記憶がいかに曖昧で操作されやすいものか、まざまざと見せつけられた様な気持ちだった。
そんな中でも、やはり自分を信じてくれる人の存在は何よりも救いであり偉大だと感じた。
作中で、青柳雅春を信じて疑わなかった大きな存在…
元恋人 樋口晴子からのメモに残されたメッセージ
そしてリポーターへ負けた父 青柳平一の台詞
見えない巨大な力を前にした青柳雅春にとって、これらがどんなに心強く響いただろうと胸が苦しくなり、目頭が熱くなった。
ラストは様々な解釈が残り、読み手が読後のこの余韻をどう判断するかで、また味わい方が変わってくる作品。
そんな風に仕掛けた伊坂幸太郎さんは凄い!!
そして今から10年以上も前の作品にも関わらず、セキュリティポッドなどという犯罪の抑止、捜査情報の質や量の向上を目的とした端末が街を占拠しているという構想…
つい先日ニュースで見かけた渋谷のAIカメラ100台プロジェクトが頭をよぎった。
いやぁ…事実は小説より奇なり
まさにそんな時代になって来ているのだ。
本作は、この渋谷AIカメラ100台プロジェクトに疑問を抱く方にこそ特にオススメしたい作品。
これを機に、伊坂幸太郎さんの他の作品も読んでみようと思った。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年9月17日
- 読了日 : 2023年9月17日
- 本棚登録日 : 2023年9月8日
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