滅びの園 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2021年5月21日発売)
4.12
  • (46)
  • (36)
  • (22)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 476
感想 : 46
5

面白かった。
鈴上は悪人なのか?でもその場その場で手に入れたささやかな幸せを守りたくて、何が悪いだろう。
人はその人その人の感じたことでしか、何かを判断することはできないと思う。
鈴上の身に起こったことから語り起こされるので、まず鈴上とかれの身近な良い人たちに感情移入してしまう。
そもそも鈴上のそれまでの生活に、何ら良いことがなくて、私だってそんなところに戻りたくないと思う。
新たに得たささやかな幸せを守りたくなる。
それが現実ではないとしても。

現実では、とても悲惨な事態になっている。
その事態を鈴上は伝聞でしか知らない。実感がない。
地球上の全てが滅びを待つような状態。
地球上全てを救うために、自分の子を殺せと言われて、言われただけで、それを信じて子を殺し身近な良い人たちを失えるかどうか。
私は無理だと思う。まず話を信じない。

地上では、具体的に脅威にさらされた中で、いろいろなことが起きる。
脅威によって家族も何もかも失う人たちが描かれる。
しんどいことばかりで、本当に地獄。

いったいどうなるのかと先が気になってどんどん読んでしまった。
結末は出たけれども、それで何もかもすっきりする!とはいかない。ザラッとした舌触りの何かが心にずーんと残った感じ。
なかなか考えさせられるラストだった。


現実世界で、唐突に土方歳三資料館という単語が出てツボった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年7月9日
読了日 : 2022年7月9日
本棚登録日 : 2022年7月9日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする