犬の力 下 (角川文庫 ウ 16-5)

  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2009年8月25日発売)
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本棚登録 : 1198
感想 : 142
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目まぐるしい協力体制と裏切り、緊迫する取引、血みどろの惨劇。後書きにあるように、「人間の思考や感情の根源的な部分を揺さぶる大きく鋭く温かく骨っぽく色っぽい」小説だった。

相当無慈悲なマフィアたちが、愛した女のために身を持ち崩していくのが、ラテンの男の人間味を感じる。
登場人物たちの、感情に揺さぶられて判断を誤る瞬間が描かれていることで、単なるクライムノベルだけでない名作になっているのだと思う。
セクシーなシーンは随所にあるけど、ラストのあの2人の幸福な情事にはしびれた。

でも後書きを読んで、この物語が約三十年間の、ラテンアメリカを中心とした麻薬犯罪の構図を精確になぞっていると知って衝撃を受けた。
政治権力との癒着もあるのが恐ろしすぎる。
麻薬の根絶の難しさを思い知らされるけど、とにかく人道に反する行為への拒絶を表し続けるしかないのかな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年12月13日
読了日 : 2023年12月13日
本棚登録日 : 2023年12月13日

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