自由からの逃走 新版

  • 東京創元社 (1952年1月1日発売)
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 自由を手に入れた後、人はなぜ再び束縛された専制的な社会に戻ってしまいがちなのかを考える社会心理学の名著。中世における宗教改革からナチスドイツまで事例に挙げている。近代人の求めた自由とは何だったのか?人間は社会的な動物だから周囲の人と同調しないと孤独になって精神的に耐えられない。自由になると人間はその孤独が嫌で何か強いものに依存を求めるのだ。それをフロムは権威主義的性格(サドマゾ的性格)と呼ぶ。他人への依存が必要なのだ。フロムは文中で、言葉の意味が変化して大事な概念がネガティヴになってしまったせいで人の思考に影響を与えている例を挙げている。例えば「感情的」という言葉は、人間の感情という大事な要素を現代人が否定的に使うせいで、悪いもののような気がしてしまうといったことだ。そして自分達の思考や意見が本当の自分の判断ではなく他人からの情報に基づくものばかりであることを指摘する。そして最後に、どうすれば理想とする幸福な自由を手に入れられるのかを語るが、そのハードルは高い。「〜への自由」という目的のはっきりした積極的な自由ではなく「〜からの自由」という消極的で行き先のはっきりしないむしろ逃避と言い換えられる自由を求める限り、また社会の中で他人と繋がって生きる限り、束縛を求めて自由から逃走してしまうことは本能的に避けられないのだ。となると、我々はやりたいことをやって幸せを実感し、最後は神か天を信じてそこに委ねるしかなかろう

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年1月13日
読了日 : 2022年1月13日
本棚登録日 : 2022年1月6日

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