ひらがなでよめばわかる日本語 (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2008年5月28日発売)
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言葉について考えます。その一文字について。
日本語という呪術、言霊、神話に畏れ入ります。

日本人にとって幸福とは何か。
現代において幸福とは、哲学的な難題であるように思います。
答えなんて出ないでしょう。言葉につまるでしょう。
ですが、ひらがなで「さいわい」と考えれば、解ってきます。

さいわいは「さきわい」である。「さき」は咲く。「はい」は気配や味わいなどが長く続くこと。つまり、幸いとは、花盛りが長く続き、花あふれ咲きみちることです。幸福とはかくも具体的なものであったのです!

祝うとはなんでしょう。
「い」は言う。「はう」は何度もする、継続すること。
つまり祝うとは、神様に、大切にする心を何度も言うことです。
では「願う」とはなんでしょう。
ね=ねぎらう。そして「はう」。つまり、神様に何度もねぎらい、心おだやかにしてもらうことです。

「ち」というひらがなは、不思議な力のあるものを言います。
血、乳、父、力のち、いかづちのち。

「あめ」とはなんでしょうか。
天、雨、海。みな、濃密な水域をさします。
空の青色を水とイメージしていたのかもしれません。天地に水がある。とても良い世界観です。

「ひつぎ」は、霊魂=「ひ」を継ぐこと。
「しぬ」は、しなゆ、つまり萎えることであり、植物と同じように人間が捉えられています。
花は鼻。葉は歯。実と耳。芽と目。木と気。茎と首。
枯るは、離れるを意味します。離は、「か」とも呼べるそうです。
しんで、かれて、その後、植物のような日本人の魂はどこの世界に行くというと「根」の国へ行きます。「ね」は不動の処という意味です。
そして「たね」から始まる。
「た」はどういう意味でしょう。丹田の「た」。魂の「た」。…。
一文字一文字が、歴史であり、音であり、動きであり、神である。
それを教えてくれる格好の入門書です。
日本語や言語に取り組んだりするような人は、苦労した人が多いですよね……といったエピソードが足立巻一の「やちまた」にあったように記憶していますが、この本に不思議な魅力やピンとくるものを感じる人は、やはり苦労をし、もしくは見てきた人なのでしょう。つまり、今を生きる人々すべてのピンとくる必読書ということです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国の学び
感想投稿日 : 2012年12月14日
読了日 : -
本棚登録日 : 2012年12月14日

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