20世紀言語学入門 (講談社現代新書)

  • 講談社 (1995年4月17日発売)
3.21
  • (5)
  • (14)
  • (51)
  • (4)
  • (2)
本棚登録 : 406
感想 : 23
3

 規範文法、文献学、比較言語学といった旧来の言語を扱う学問分野から離れ、言語そのものが何であるかを問い始めたソシュールから始まり、そこから音韻論を中心に発展したプラーグ学派、コペンハーゲン学派というヨーロッパ構造主義言語学の起こり、一方で新大陸で発達した未知の言語の記述に立脚したアメリカ構造主義言語学とそこから出てくるレヴィ=ストロースの人類学、さらに記号論、そしていよいよ生成文法、最後は語用論、社会言語学といった範囲まで、20世紀言語学の発達を概観するもの。構造主義から「構造をいかに動的なものとするか、あるいはいかに開くか」(p.149)という流れ、意味を徹底して捨象してきた生成文法から「自己限定の果てにその外部を指し示すように」(p.200)という流れが分かる。
 おれが大学2年か3年の時に頑張って読んだ本だったが、たぶんこのブクログを始めるよりも前に読んだ本で、レビューが書かれていないこともあったし、最近言語学の勉強をしていないのもあって、今回あらためて読んだ。「入門」といっても容赦ない。色んな言語学者の名前が次々に出てきて、ただこんな感じです、で終わるのではなく、それなりに思想の要点が分かりやすく書かれているが、難しい。おそらく本当に言語学や思想史を知らない人が読む本としてはキツイんじゃないかと思った。
 印象的なのは「ソシュールのペシミズム」(p.39)。言語を研究対象にする時に、それを語るのに必要な言葉自体が研究対象になってしまうという、どうにもならない感じが伝わって来た。「言語を問う言語、あるいは言語学を問う言語学者というものの姿」(p.39)の苦悩、というのが分かる。比較言語学のような「言語を自律的な学問にする功績は、同時に、言語を実態的にとらえすぎる危険性をはらんでいた」(p.48)とか、「比較言語学はそれ自身が自己批判をして、一般言語学という立脚点を必要とするようになっていた」(p.49)というように、何か捉えやすいものを研究対象とすると、そんなに分かりやすくていいのか、みたいな批判が出てくるものなんだろうか。まずは音素から、その分布が云々と研究を始めると、そんなの分類論だと批判する人が現れ、意味はよく分からないからそんなの扱いません、と考えると、それを批判する形で、いや意味も考えましょうよ、という人が現れる、という感じだろうか。
 大学の時にチラッと聞いた多くの言語学者の名前が出てくるけど、当時から全然おれが整理できてないということに改めて気付き、いつかは自分の中で体系化できるように、もっと勉強したいと思った。(16/09/22)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2016年9月22日
読了日 : 2008年7月23日
本棚登録日 : 2008年7月23日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする