麻雀放浪記(一) 青春編 (角川文庫)

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再々々々々々々々々読…
初めて読んだ10代の頃から約40年、何度読み返したか分からない。私は史上最高の傑作の一つだと思っている。
さて、本作は麻雀小説かと言われるとそうであるがそうでもない。戦後の様子を描いた青春群像でもあり、ピカレスクロマンでもあるのだ。
この作品に出てくる無頼な博打打ち達は悉く性格破綻者であり、博打でしか生きている実感を感じられないはぐれものだ。だからこそ生の、生きている臭いがプンプンとする。彼らは全身全霊を賭けて生きている。戦後の復興期に少しずつ安定を求める人々が増えている中で、彼らだけは獣であろうとした。
彼らは多分近くに寄ると耐えられないような獣の臭いを発散しているだろう。言動も野卑で常識もマナーもない。でも、それなのに、この何とも言えない潔さは何だろう。眉を顰めながらも彼らの一挙手一投足から目が離せない。
現代に生きる私たちには決して出来ない、アウトローとしての生き方。それは昨今の節操も思想もない犯罪者とは全く違う、彼らなりの一本芯の通ったアウトローとしての矜持。それを感じるから読む手が止まらないのだと思う。

余談だが、亡くなった和田誠さんが初監督した「麻雀放浪記」は日本映画史上に残る名作だ。映画をこよなく愛し、本作を愛した和田誠だからこそ撮れた至極の映像作品。特に鹿賀丈史のドサ健と高品格の出目徳はハマり過ぎていて他の俳優ではあり得ないと思わせるほど。
今夜は本作を読み直した余韻に浸りながら、映画「麻雀放浪記」を観ようと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年12月21日
読了日 : 2023年12月21日
本棚登録日 : 2023年12月21日

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