背負い水 (文春文庫 お 18-1)

著者 :
  • 文藝春秋 (1994年8月1日発売)
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感想 : 9

荻野アンナさんとお話ししたことがあるというのは、慶應に入って最もよかったことの一つです。あの美しい横顔で、「正解なんて何もないのよ。あるのは、算数の答えくらい」とおっしゃった時には、思わずぞくっとしました。芥川賞作家というのは、こんなに普通にドラマチックな言葉を発するんだー!と感動したのです。

↑の言葉は今でも折に触れて思い出すけれど、それ以外の会話の記憶はだいぶおぼろげになってきました。もう15年近く前のことだから。
確かその時は、フランス文学を勉強されたアンナさんが、日本語で小説を書かれる理由を質問したんですよね。そしたら、ラブレーとかフランス古典文学の面白みを日本語で伝えたいからというような答えだったと思います。
学生だった私は、それにとても納得しました。正直アンナさんと会う前に予習として読んだ作品には、少し違和感を持っていたのですよね。でもそれが、異なる文化・異なる言語の文学を日本の小説に落とし込むと考えると、腹落ちしたのです。
例えば、初めてカヌレを食べた時のような感じ?最初は何この食感、焦げ?とか訝しむけど、だんだんおいしくなってくるような。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2019年3月5日
読了日 : -
本棚登録日 : 2019年3月5日

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