細雪 (中公文庫 た 30-13)

著者 :
  • 中央公論新社 (1983年1月10日発売)
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本棚登録 : 1413
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豪商の家柄を纏う4姉妹の家族模様としきたりが、戦時統制下傾く国運と相俟って、少しづつ崩れゆく様を描く。純文学の金字塔と言われるが、難解さはまったく無く、全体に落ち着いたトーンながら、つい読み耽るほどの魅力があった。大正期の思考やスタイルが染み付いた長女〜三女に対し、家の隆盛時代を知らぬ四女の、戦後女性を先取る生き様が対照的。戦前の家督制度や身分意識への理解無くして読めない世界で、今日からすればもはや時代小説の部類。だけに、現代に無い情緒や風俗が艶やかに映り、色褪せなさにもなっている。古文のようにつらつら続きながら、論理的で無駄の無い文体は精密で、特に面白く読んだのは書簡の文面。趣旨や謙譲、気遣い方や話の運び方など、メールやチャット主体の我々から見て、昔の人の遣り取りや物事の進め方決め方が、まどろっこしくも、筋道は外してない点、コミュニケーション手法の勉強になるほどだった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文芸
感想投稿日 : 2023年3月27日
読了日 : 2023年3月26日
本棚登録日 : 2023年3月26日

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