本を読む本 (講談社学術文庫)

  • 講談社 (1997年10月9日発売)
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本棚登録 : 7797
感想 : 718
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1.著者;アドラーは、1902年生まれ。コロンビア大学を卒業し、シカゴ大学哲学科教授。エンサイクロペディア・ブリタニカ編集長等を歴任。教師が一方的に教えるのではなく、学生と共に古典を読むセミナーから影響を受けたそうです。もう一人のドーレンは、1926年生まれ。コロンビア大学を卒後。同大の英文科教授。ピューリッツァー賞受賞の伝記作家の甥です。
2.本書;原書のタイトルは、“How to read a book”。専門書・教養書を読む技術が書かれています。“読む”事によって知識を得、理解を深め、優れた読書家になりたいと思う人の為に書かれた本。4つの読書レベル「①初級読書(初歩的な読み書きを学ぶ)②点検読書(拾い読み・下読み) ③分析読書(徹底的に読む) ④シントロピカル読書(比較読書法)」を解説。なお、小説の読み方は、後半に記載。四部構成です。第一部;読書の意味、第二部;分析読書、第三部;文学の読み方、第四部;読書の最終目標。
3.個別感想(気に留めた記述を3点に絞り込み、私の感想と共に記述);
(1)第一部中の『1.読書技術と積極性』より、「われわれ現代人は、情報の洪水の中でかえって物事の正しい姿が見えなくなってしまっている。・・理由の1つは、現代のマスメディアそのものが、自分の頭でものを考えなくてもよいような仕掛けに出来ていることである。・・この知的パッケージがよく出来過ぎていて、自分の判断を下す手間まで省いてくれるので、読者や視聴者は全く頭を使わなくてもすんでしまう。・・考える必要がなくなったのである」
●感想⇒著者のいうメディアは“テレビ、ラジオ、雑誌”です。「マスメディアによる、情報過多が理解の妨げとなり、物事の正しい姿が見えなくなっている」と言っています。確かに、テレビからは受動的に情報を受け取るだけで、情報が一方通行の場合が多いと思います。視聴者が情報を真に受けて、行動する場合があります。一例ですが、バナナの効用が放映された時、店頭からしばらくバナナが消えました。視聴率競争の名のもとに、先導的な事だけは止めてもらいたいと思います。我々も、物事の善悪を判断するモノサシを持たなければなりません。その為の手段の一つが読書です。著者が心血を注いだ書物を読んで、知識を学び、蓄積し、自分の価値基準を形成する事です。さらに、生きる糧を得られたならば、最高ですね。それには、受動的ではなくて、能動的な読書姿勢が必要でしょう。因みに、齋藤孝さんは、「読書は自己形成にとって強力な道である」とおっしゃっています。
(2)第二部中の『10.本を正しく批評する』より、「自分の判断を下さない人間は、本当の意味で、学び得ない。読書技術の訓練を積んでも、本から学ぶ事は出来ない。“最も優れた批評家こそ最も良き読者”である。良き読者は、読み終えて、本に語り返し、自分自身の判断を下そうとする」
●感想⇒前述したように、本書には専門書・教養書を読む技術が書かれています。小説とは違い、知識習得を狙った読書です。従って、小説のように読み流すのではなくて、熟読し、中身を理解する読み方をしなければなりません。私は、専門書については、先ず全体把握の為に、流し読みです。次に、気になった箇所を黄蛍光ペンでラインを引きます。さらに、その中の重点を赤蛍光ペンでラインを引いて、吟味の上、感想を数点メモします。“感想⇒書いてみる⇒自分自身の判断をする”につながります。書出しは悩むものです。単語だけでも良いと考えます。専門書故に、こうしたやり方は、本の理解に繋がり、批評ができます。著者の言う“判断を下す”を大仰に考えなくて、感想で十分。自分自身の方法で楽しんでこそ、読書と思います。
(3)第四部中の『15.読書と精神の成長』より、「精神の成長は人間の偉大な特質であり、・・精神の鍛錬を怠ると、“精神委縮”という代償が待っている。・・多忙な生活を送っていた人が、引退すると急に衰えがくることが多いのもこの為である。仕事一筋に生きてきたが、それは外側から人為的に支えられていたのである。その支えがなくなると、自分の中に精神的な貯えのない人は思考する事を全くやめ、やがて死が始まる」
●感想⇒私も“仕事中心の生活”を送ってきた方です。高校生の頃から読書を始めました。キッカケは恩師の言葉です。「岩波を読みなさい。岩波には難解な本もあるが、将来読み返しなさい。経験を積んで再読すれば、新たな発見があると思うよ」でした。私なりに、岩波の“白帯、青帯、赤帯・・”と色々と読みました。ルソーの社会契約論、ヘッセの車輪の下、等。現在は岩波に拘らず、色んな本を読んでいます。精神委縮という代償がない事を願い、読書し続け、いつまでも“精神の成長”を図りたいと思います。
4.まとめ;著者は、「読むに値する良書を、知的かつ積極的に読む為の規則を述べたもの」と書いています。表面的に本を読むのではなくて、深く理解できるような読書術を紹介しているのです。やや専門書解説に偏りがちな内容ですが、小説の読み方にも言及しており、読書好きにはとても有益です。発刊して、80年経ちますが、類似本とは一線を画す示唆に富んでいます。例えば、“森を見てから木を見る読書法”等は、私も実践しており、同感です。本書は、ロングセラーというよりも、古典と言えるでしょう。読後のまとめは、“覚醒の感”でしょうか。 (以上)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年12月27日
読了日 : 2021年9月28日
本棚登録日 : 2021年9月28日

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コメント 2件

まことさんのコメント
2021/12/27

ダイちゃんさん。こんばんは!

読了されたのですね。
ダイちゃんさんの、読書歴や、経験を踏まえた、素晴らしいレビューだと思います。
私も、読んだ本ですが、参考になるところの、大変多い、魅力的なレビューでした。
ありがとうございました。
はやいですが、来年もよろしくお願いいたします。

ダイちゃんさんのコメント
2021/12/27

まことさん、今晩は。ダイです。いつも、いいね❗️サイン頂き、ありがとうございます。その上に、お誉めコメントまで頂戴し、恐縮しています。まことさんの本棚を時々覗かせて頂き、参考にしています。こちらこそ、来年もよろしくお願いいたします。

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