生きている源八 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1988年9月28日発売)
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本棚登録 : 109
感想 : 14
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久々に読んだがやはりいい。それぞれの話が心に沁みる。木村久邇典氏の解説にある、「山本周五郎は、名を惜しむよりもいのちをたっとんだ文学者であった。」この一語が全てを表している。武士道だとか現代に馴染みのない思想よりこの命を尊ぶという人間として不変の道理が通っているから、世代問わず彼の文学に皆共感し感動するのだ。私もその一人です。一生読み続ける。

【熊の十郎左】普段は獺眠りと罵られても気にしない十郎左だが、城のために謀反に荷担していた義父を「乱心で義父を切った」ことにして欲しいと言って死ぬ。
【西本地鮪介】農民の鮪介は針を二つに割ろうと独学で修行するうち武士との勝負にも勝って家禄を与えられる。しかし針を割る修行は進まず、ある日切り捨て御免になろうとしている商人を無償の思いで救ったことで開眼し、農業に再び専念する。
【足軽槍一筋】足軽のくせに槍修行などして、との陰口を聞いて勝負を挑む平馬。しかし対したのは幼馴染みの孫次郎だった。一本とったが追い出され、妹と雇ってくれる地を求め流浪する。が、最後腕を磨いた孫やんと勝負して引き分け元に戻され師範代になる。
【藤次郎の恋】道場の皆憧れる小浪に呼び出された日、師範は翌日腕で小浪の婿を決定すると宣言。心躍らせる藤次郎に小浪は幼馴染みで腕は立つが酒を覚えてしまった数馬に勝って欲しいと言った。辛く勝ちは譲るも、数馬は半年後また酒で駄目になる。自分の判断は間違っていたかと悔いる藤次郎だが、ある夜数馬が瀕死で藤次郎の元へ来る。師範の敵が討てなかったという。藤次郎は数馬の代わりに彼の敵を討ち、数馬の手柄とする。
【聞き違い】幼馴染みの金右衛門に腕は立つが乱暴者の陣兵衛の助太刀を頼まれるがそこに別人もいたので断る。わかっていたが、金右衛門は返り討ちにあう。誰もが平次郎が敵討ちをすると思っていたが平次郎は徹頭徹尾それをさけ、光圀にあまり乱暴者だから出て行く旨の伝言を聞き違えたと言い張って陣兵衛を討つ。
【新女峡祝言】治水工事を邪魔する叔父の娘の絹絵に想いを寄せていた伊兵衛だが、学友の市ノ丞が彼女を嫁に貰いたいと言う。絹絵に心を聞かれるが貴女が決めることだと伊兵衛は譲る。しかし、絹絵が囲炉裏に落ちて顔半分の火傷を負ったとなり市ノ丞は逃げ出す。しかし伊兵衛は絹絵を嫁に貰いたいと叔父に言う。叔父が感動するところで絹絵が包帯を取り、彼女の狂言だったことが明かされる。
【立春なみだ橋】賭博に嵌ってしまった新吉は仁右衛門にしょっ引かれるところを「おっかさん」と無我夢中で叫んだことで女手一つで彼のために生きた亡き母のことを諭され、見逃す代わりに同じように息子を探して目を失った老婆を看取れと言われ、そのように過ごすことで改心する。しかし、賭場の連中は老婆に本当のことをばらすと彼を脅し、来るように言う。悩んだ末そこに行くと、連中の一人が他の連中を片付けていた。彼こそがその老婆の息子であった。
【豪傑ばやり】豪傑を家禄でつるとかどうなの? 本当ははい俺でしたー
【生きている源八】※注意点※彼が作中話してる勝つことに意味がある云々は戦時中の検閲のためのまやかしなので、彼が生きて帰ることに注目して読むべし。
【虎を怖るる武士】虎は怖いと臆面もなく言う吉之介は雅典に気に入られ今でも元服前の恰好でいる。しかし独眼竜から家宝の笛を取り返し、元服を果たし、幼馴染みの家禄取り上げを帳消しにし、両思いの子を嫁に貰った。
【驢馬馴らし】ボヴァリィ夫人こと青べかとの戦記。
【〔戯曲〕破られた画像】愛は口にしないと伝わらないのよ!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代小説
感想投稿日 : 2011年12月1日
読了日 : 2011年11月30日
本棚登録日 : 2011年11月30日

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