ワーカーズ・ダイジェスト

著者 :
  • 集英社 (2011年3月25日発売)
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仕事の関係で偶然出会った二人の佐藤さん(同い年の31歳で誕生日まで一緒)。1人は女性でデザイン事務所勤務&フリーのライター、もう一人は男性、建設会社に勤めている…。.


津村さんの小説を読むと、“働く”ことに対して、自己実現だの、夢だの、なんて言ってる場合じゃないんだな、と思えて、でも、じゃあ、仕事をしている自分の日常はただの暗い日々なのか、ということでもないんだよね。

女・佐藤さん(奈可子)は、仕事の内容に関してはなんとかやれていると思いつつ、職場の女同士の人間関係ではチリっとくることの多い日々。また、仕事相手の他社の男性が、最初はいい関係だと思っていたのが実は、暗に尊敬を求めているらしい、ということが徐々にわかってきて、そのアプローチのねちっこさに辟易している。

また、男・佐藤さん(重信)は、受け持ちの建築現場の騒音被害を受けているというクレームに振り回され、しかもそれは中学の同級生らしく、重信個人に対する嫌がらせと思われる、と気づき始めるあたりが、そのわけのわからなさが気持悪いというか、仕事ってそんな風にどこからイヤな風が吹いてくるかわからないところがあるよね、というか。

奈可子と重信の話が交互に語られて、元々、大阪出身の二人が段々に近づいていく展開が面白い。
少女漫画なら当然、ここで二人に恋が芽生えることになるのだけど、(そうなってもいいな、と思った)そこは津村さん、ということで・・・。

津村さんって、仕事に生きがい、というのでもなく、じゃあ、恋とか結婚で幸せに、というのでもなく、日々のあれこれ、やってくるものは、はいどうぞ、あるいは、まぁ、ちょっと脇に置いとくか、みたいに淡々と受け止めたり、やり過ごしたりする人なんだろうなぁ、と思う。

で、じゃあ、何も面白くない話か、というと、それが面白い、というところが、なんていうか、面白いところで・・・。(汗)(#^.^#)

ただ、正直、私が津村ファンとなったのは、
「とにかくうちに帰ります」 からなので、この「ワーカーズ・ダイジェスト」を含め、それ以前の作品は、まだちょっと試行錯誤中、みたいな感じを持ってしまう。


「ウエストウイング」
「これからお祈りにいきます」

と、最近の作品は出すたびに、私の中ではヒット(#^.^#)で、
津村さんの実際の最初の職場でのパワハラ経験の呪縛(と言ってしまうけど)から抜け出るためには随分何作もの小説を書かなければいけなかったんだなぁ、なんて勝手に分析してしまっている次第。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年10月7日
読了日 : 2013年10月7日
本棚登録日 : 2013年10月7日

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