よかった!(*^_^*) とてもよかった!
ずっと現役の先生だった瀬尾さんがこんなに優しい中学生物語を書けるなんて、 うん、若い子たちって、中学校って、 いいところがたくさんあるんだ。(*^_^*)
箱根駅伝では毎年テレビ中継を見ながら泣いてしまう私だけど、
中学生の駅伝に関しては、そういえばやってるよね、新聞にも出るし、くらいの距離感。
そして、「風が強く吹いている」「一瞬の風になれ」のヒットのあと、何作も陸上ものが出版され続けているので正直、またか…と思いつつ、でも瀬尾さんだしね、なんて手に取った「あと少し、もう少し」だったのですが。
駅伝のメンバーは6人。
それぞれ、
いじめられっ子っぽかったり、
金髪のワルだったり、
何でも引き受けてくれる気のいいヤツだったり、
一言居士的なひねくれ野郎だったり、
唯一の2年生でいつも明るい後輩キャラだったり、
みんなをまとめ、いつも冷静で爽やかな部長だったり、
とある意味、類型的とも言えるメンバー・・??かと思っていたら、
そこが瀬尾さん、
駅伝区間ごとの章立てで、それぞれの一人語りをさせることにより、
その男の子たちの思っている自分、他人から見た彼ら、
が、どんと奥行深く描かれていて、とても読み応えがありました。(*^_^*)
小学校低学年からランクが常に最下位、と自認、
だからイジメられるという範疇にも入れてもらってない、と思っていた設楽だけど、
実は・・・とか、
「やってもできない」ことが表に出ることを避けるあまりなんでも途中で投げ出してきた大田だけど、
やはり彼も…、とか。
ネタばれになるからあまり書けないのだけど、
それぞれに、うん、わかるよ、そうだよね、と肩を叩きたくなるような“10代の思い”があり、
意外な方向に人間関係が進み、と、
筋立てを楽しむお話としても、また、中学生っていい時期だったんだね、という嬉しい発見としても
とてもいい小説を読ませてもらった、と思いました。
そうそう、忘れてならないのは、顧問の上原先生。
前年までは、強面バリバリの陸上専門の先生が顧問をしてくれてたのに転任により、
なんと陸上のことは何も知らない美術担当の若い女の先生に代わり、
これってすっごくまずいんじゃないの、という幕開けだったのですが、
その先生が、ふわふわとした存在感ながら、要所、要所で生徒たちをいい方向に連れて行ってくれるんですよ。
ちょっと引用しますね。
(誰にでもイヤなことを言って煙幕を張ってしまう渡部に、)
「私、教師になっていろんな生徒を見てきたけど、その中でも渡部くんは一番」
そこまで言って上原は笑い出した。
「何だよ?」
一番、理屈っぽい、面倒くさい、嫌味っぽい、冷たい、嘘くさい。俺は思いつく限りのことを頭に思い浮かべた。
「いや、一番中学生ぽいなって」
「中学生ぽい?」
「そう。自分らしさとかありのままの自分とか、自分についてあれこれ考えるの、いかにも中学生でしょ」
なんか、ここだけ書くと、何でも見透かしてますよ、みたいなイヤな場面にも見えるかもしれないけど、そこまでの流れとか、その後の渡部本人の気持ちとかで、すっごく優しい場面になっていたこと、強調させてください。(*^_^*)
そして、瀬尾さんって中学生が好きなんだなぁ、学校でこんなふうに生徒たちを見てたんだなぁ、と嬉しくなったことも。
その後、2年生の俊介にふっと自分の思っていることを、思っているまんまの言葉で語ってしまう渡部。
それに対して俊介が
「キャラ設定に迷ってるうちに、インチキくさい芸術家みたいになったってことですね」
というあたりには、ツンときながらも爆笑だったんですよ。
新年早々、優しくて温かい物語を読めたこと、
また、人間って中学生でも大人でもちょっと見だけじゃわからないものを抱えているんだ、でも、ちょっと見だけで感じることもそれはそれで大事なんだよね、ということさえも気持ちよく伝わってきたことが
ホントに嬉しい「あと少し、もう少し」でした。
大人にも若い人にもぜひぜひどうぞ!とお薦めしたいです。(*^_^*)
- 感想投稿日 : 2013年1月24日
- 読了日 : 2013年1月24日
- 本棚登録日 : 2013年1月24日
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