食玩コレクターのお父さんは、家族にも型抜きされたプラスチック人形のように自分の望むポーズを取ってほしいと思っている。お母さんは魔力がないからお金や想像力で願いをかなえる、魔法少女の悲しい成れの果てみたいなひとだ。
松葉は小学生たちから「吸血鬼の家」と呼ばれる一軒家に住んでいた時子さんの古いスタンウェイを追って引き取り先の南雲家を訪れ、そこで特別な雰囲気を持つ少女・紗英と出会う。
協調と同調のなかで生きてきた松葉には、誰にも媚びず自分の直感を信じて行動する紗英の態度が眩しく見えた。
彼女の奏でるピアノの音に惹かれ、ときにその言動に振り回されながらも、松葉は新しい自分、本当の自分らしさを模索し始める──。
松葉と紗英を取り巻く大人たちは皆、悪人ではないけれど自分勝手で独善的。
彼女たちの閉塞感や苛立ちが痛いほど伝わってきます。まるでピアニッシシモのように。
たとえ聞こえなくても、無音とは違う。いちばん弱い音がいちばん強く心を震わせるように。
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―梨屋アリエ
- 感想投稿日 : 2013年7月19日
- 本棚登録日 : 2013年7月19日
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