秋が闌けて森は朽ちる。地面を覆いつくす落ち葉の下のかすかな気配。それは命。それは獲物。子どもたちを育てる母ギツネは、狙い定めて跳躍する。やがて冬。子どもたちはまたたく間に成長する。巣穴の外に飛び出してエサとりごっこをして遊ぶ。遊びはやがて本当の狩りになる。食べものをさがしにでかける親子のもとに、嫌な音が近づいてくる……母ギツネはいつまで待っても帰ってこない。
そして子どもたちだけで森を生きる日々がはじまる。季節は移ろう――。
「世界の美しい科学絵本」そのシリーズ名にふさわしい、絵の美しさと、巻末の簡潔で明晰な「死とはなにか」という問いへの答え。森の生き物たちの生と死を通して、死んだらどうなるのか、腐敗とはなにか、そして命のサイクルという仕組みを、あくまで科学の観点からやさしく教えてくれる。
同シリーズの『蛾 姿はかわる』も、オオシモフリエダシャクという蛾の「工業暗化」、つまり環境に適応することによって、どのように変化していったかを子ども向けにわかりやすく描いている。虫は苦手、という人は多いと思う。しかも蛾。けれど見ないのはもったいないくらい絵が奇麗なので、ぜひ手に取って見てほしい。
このシリーズ、ぜひ続いてほしいと思う。
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外国の作家:T・U・V
- 感想投稿日 : 2021年12月1日
- 本棚登録日 : 2021年12月1日
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