あの日、君は何をした (小学館文庫 ま 23-1)

  • 小学館 (2020年7月7日発売)
3.64
  • (370)
  • (1143)
  • (982)
  • (128)
  • (26)
本棚登録 : 10309
感想 : 873
3

まさきとしか 彼女の作品を読むのは二回目であり、顔見知り(一方的)くらいの浅い仲(一方的)だ。それなのに「母親の狂気」と=で強く繋がる彼女のイメージは伊達じゃないことを思い知らされた。

優しい夫と可愛い子供達に囲まれ平凡ながらも幸せな家庭を持ついずみ。ある日息子の大樹が夜中、逃亡中の殺人事件容疑者に間違われ警察を振り切り逃げ出した後、事故を起こし亡くなる。そこから崩れる平凡と平常によって産まれる母親の狂気に、読者は自身に置き換える者、好奇心で釘付けになる者とに別れるかと思う。
私は人間的に残念ながら後者だ。
何故素行良好だったはずの息子が家族に隠れて夜中に外に出たのか、何故警察に声を掛けられ逃げ出したのか。何故彼は死ななければならなかったのか。沢山の何故が蔓延る中、いずみに産まれた狂気を残し場面は唐突に切り替わる。

こちらは至って単純だ。時は15年後。
ある女性が殺され、容疑者の男が逃亡、警察がそれを追う。ふむ、シンプルである。
気になるのは容疑者辰彦の妻、野々子と辰彦の母、智恵。後に頻繁に登場する野々子の母、瑤子の存在だ。なんともまぁ  母、母、母だらけである。
辰彦に対して無関心な野々子、正反対に必死に探す智恵。そして野々子の人格を作り上げたであろう毒親瑤子。読み進めれば進めるほど事件の真相に近付いてる気になるのに、どうしても15年前の事件との繋がりが見えない。むむぅ、ヤキモキしちゃう。

この無関係に見える二つの事件を繋いだのが、変わり者刑事三ツ矢とその飼い犬...失礼。子犬系メンズの岳斗くんだ。少し脱線するが、刑事にスポットの当たった作品ではないものの、彼らの関係性が「...なんか好き」とホッコリした人も少なくないと思う。素敵なバディだった。
そんな二人が真実を突き止め飛躍する後半は緊張感溢れるスリリングな展開だ。温めすぎてこの道しか残っていない車幅の狭さは感じたが、それでも昂る気持ちは減退しなかった。

真相全て白日の元に!真実はいつもひとつ!なコナンくんオチとはならない曖昧模糊な着地は賛否ありそうだが、エピローグとなる「知らぬが仏」な展開は色んな感情が溢れ出た。
小説として楽しい、
描写が胸糞悪い、
人として理解出来ない、
でも多分これは現実に忠実だ、背くなかれ
脳内がとても忙しい事になった。

ーーあの日、君はなにをしたーー
たとえ露見しようがしまいが、自身の行動によって他人の未来を変える事もある。これは良くも悪くも避けられないのだろう。よもやよもやだ。
しかしつまり、大樹くんはお母さんを愛していた。救いが無いように思えるけど、暗黒書物大好きマンからすればハッピーエンドな気もしちゃうなぁ。よもやよもやだ。┐(´-`)┌

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本作家
感想投稿日 : 2022年2月4日
読了日 : 2022年2月4日
本棚登録日 : 2022年2月4日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする