<ニューヨーク三部作>の最後を飾る作品。前二作同様、探偵小説のフォーマットを用いているが、ミステリー要素が最も強いのは今作であろう。読み手を牽引するストーリーテリングの妙技も冴え渡っている。ミイラ取りがミイラになるという物語だが、憧憬と憎悪の境界線、過剰な同一化に伴うリスク等を通じて、個々人のアイデンティティを司る要素が如何に脆弱であるかを改めて思い知らされる。最終的に妻子の存在が彼をこちら側に留まらせたのだが、それは他者を介した己の実存性を題材としてきた三作品におけるひとつの着地点でもあったのだろうか。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2021年12月11日
- 読了日 : 2021年12月11日
- 本棚登録日 : 2021年12月11日
みんなの感想をみる