それでも、日本人は「戦争」を選んだ (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2016年6月26日発売)
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戦争を考えるには、どんな材料が必要で、改めてどう検討するかを膨大な資料から教示。戦争の悲惨さを強調するだけの論調や美化もしくは自虐的でもない、中庸的な視点でできるだけ伝えようという意思は感じられた。
中高生向けの講義を一緒に受けているように、その時代に生きていたらどのように戦争を捉えていただろうかと立ち止まって考えながらまた読み進めた。
日清戦争から太平洋戦争まで十年ごとに大きな戦争をやってきたような国家である日本。戦争を国民に説得するための正当化の論理を政治家や軍人の言葉、世論調査などによる資料をもとに紹介している。地図を見ながら各国との交渉や戦禍を何度も確かめた。
ウォー・スケアの標的になることは今後も起こりうる。
まだ消化不良であるが過去と現在の事例との対比を行い、歴史を学びなおす機会としたい。
短歌が紹介されていたので抜粋
人間の常識を超え学識を超えておこれり日本世界と戦ふ(南原繁 開戦日)
きさらぎの はつかの空の月ふかし まだ生きている子は たたかふらむか(折口信夫)

覚書
戦争ではなく、報償、不法行為に対する武力行使
戦争とは相手国の社会の基本的秩序(憲法)を書きかえるもの(ルソー)
中国喪失のトラウマがベトナム戦争の泥沼化を招いた(アーネスト・メイ)
戦争で得たものを外交の失敗で奪われた(三国交渉)政府への不満から普通選挙運動が生まれた
日清戦争の結果アジアからの独立達成(不平等条約の改正)、台湾と澎湖諸島を獲得、日露戦争の結果西欧からの独立達成(関税自主権の回復)、韓国を併合し植民地化 日露戦争戦死者84000人戦傷者143000人 日露戦争は良い戦争という認識
韓国問題と満州問題との論点で日露の対立
ウォー・スケア 大地震の後に襲ってくるかもしてない根拠のない恐れで日本人や中国人の襲撃や虐殺が起こった
満蒙は我が国の生命線(松岡洋右)
満州事変2か月前調査で東大生が武力行使を88%は是としていた
戦争に反対する勢力が治安維持法違反で次々と検挙
陸軍の熱河侵攻が連盟規約に抵触、脱退
国際連盟規約第16条 連盟が解決に努めているとき新たな戦争に訴えた国は全ての連盟国の敵と見なされる
戦争は必ずしも必要なし。戦争なきも満蒙をとる必要ありや(木曜会 永田鉄山)
公理に訴える方針を選択 国際連盟による仲裁を求めた(蒋介石)
戦争を進める政府を非難していたのが起こらないのは不思議だ 土地や資源の過不足の調整は強力なる国際組織の統制によってなされるべきだ(吉野作造 民族と階級と戦争)
日本切腹、中国介錯論(胡適)
相手の能力の軽視はどの国家の軍隊にもある
現代の戦争は持久戦、経済戦となるが物資貧弱、技術低劣、主要輸出品目が生活必需品でない生糸である点で日本は戦争する資格がない(水野廣徳 無産階級と国防問題)
戦死者の死に場所を教えられない国
満州開拓と国や県の助成金、敗戦後の引き揚げ
捕虜の扱い ドイツ軍の捕虜アメリカ兵死亡率1.2%
日本軍の捕虜アメリカ兵死亡率37.3%

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2022年2月13日
読了日 : 2022年2月13日
本棚登録日 : 2022年2月13日

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