後半にいくに従ってドラマチック(ある意味チープな展開)になるアーヴィング作品の構成は健在だった。
ただ、それは売上のために入れてるような卑しいものというよりは、読者に純粋にストーリーを楽しく読んでもらおうという一流作家としてのサービス精神なんじゃないかと思います。全部自分の憶測だけど。でも、メロドラマが異常にくどくならないし、骨太な作りは三文小説と呼ぶにはあまりに作りこまれすぎてる。
読み終わった感想としては、この物語のキーワードは他の方が書いている通り『ルール』を軸にしたお話だと思います。サイダーハウスの事故防止のためのルール、ミスタ・ローズの日雇い労働者をまとめるためのルール、当時のアメリカの中絶禁止という法律、そして主人公ホーマー個人の『人の役に立つように生きる』というルール。
物語の中で、上に並べたルールを、敷く側は守るように強制し、敷かれる側は(だいたいの登場人物が自分の自由を制限されるので)破ります。
主人公ホーマーは最後に、セント・クラウズの非合法の堕胎手術をすることこそ、自分が役に立つ場所(必要とされる場所といったほうが正しいかも)だと悟り、帰るのを嫌がっていたセント・クラウズに戻ります。
ルールは人を縛るものですが、ルールがあるからこそ世の中は上手く回ってもいる。人間もルールで自分を律するからこそ他人を助けられるような特別な力を持てる。もちろんルールに盲目的に従うことは何ももたらさないけど。・・・・・・小説のテーマはそんな所じゃないかなと思います。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ジョン・アーヴィング
- 感想投稿日 : 2012年10月1日
- 読了日 : 2012年10月1日
- 本棚登録日 : 2012年9月17日
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