人生論 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (1980年3月17日発売)
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感想 : 13
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「人生とはこの男が調べようとしている水車である。水車が必要なのは粉をよく挽くためであり、人生もそれをよきものにするためにのみ、必要なのだ。(P20)」人生とは、それ自体が目的なのではなくて、粉を挽くために必要なもの。粉を挽くために与えられたもの。この考え方は私にとってはパラダイムシフトだった。ただ生きていることに価値があると、ぼんやりと認識していたが、人生はそれ自体に意味があるわけではなく、何かのためにあるのだという発想。人生をやり過ごしている感じがあった私は背筋を伸ばされた。ただ健康に長生きして人生をやりすごすのは、何の目的もない水車がただ回り続けているのと同じ。私は何をしたいのか。私はこの人生を何に捧げるのか。
「己れの行動を選択するのに指針というものがなくては、人は生きていけないのだ。そこで人はいやおうなく、理性の判断をはなれて、個々の人間社会に今日まで常に滞在してきている表面的な生活方針にしたがうことになるのである。この指針はなんら合理的な説明をもつものではないが、これこそ万人の大半の行動の原動力をなしているのだ。(p58)」本当にその通りで、私は自分の人生の目指すものを自分で決めずに周りに流されて人生を終わらせてしまおうとしている。訳の分からないところに流れて行って死んで良いのか。周りの、世の中の流れがいかにどうでも良いかってこと。自分の人生は一瞬。どこに流れてていきたいのか。

人間の本能についての考察よりもむしろ、どのようにそれを理性で支配するかということが大事。

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最初から中盤まではとても、面白かった。ただ後半の内容は、トルストイ自身、死について考えざるを得ないほどの恐怖心を持っていて、考えに考えて作り上げた納得できる「死の在り方」という印象を受けた。私は死ぬことにあまり恐怖心を抱いていないから(あるいは死を間近に感じる経験をしていないからかもしれないが、)彼のこだわりに対して興味を持てなかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年9月8日
読了日 : 2014年9月25日
本棚登録日 : 2014年9月8日

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