フランスを舞台にした歴史小説を得意とする佐藤賢一氏による百年戦争の概説書である。
百年戦争は、現代の主権国家体制に馴染んだ我々からすると、つい安直にフランスとイングランドが戦った戦争である、と思い込みがちである。
そう思い込むと、大変分かりづらくなるのが百年戦争である。
本書は、百年戦争以前にはいわゆる国家としてのフランス・イングランドは存在しなかったという前史を確認することから始まり、この百年の争いを通じてナショナリズムが芽生えていったとの結論で終える。
元々、読みやすい文章を書く人だが、全体が上記のあらすじに支えられているため、茫漠としていた百年戦争の輪郭が読むほどに浮かび上がるようだ。
読みやすさとそれなりに踏み込んだ歴史知識を盛り込んだ一般読者層向けの概説書を書かせたら一級品である。
大変楽しく読めたし、この時代に関する理解が深まった。お勧め。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
歴史
- 感想投稿日 : 2020年11月17日
- 読了日 : 2020年11月16日
- 本棚登録日 : 2020年11月17日
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