ヴェトナム戦争の最中、パリへ向けて脱走した兵士をを追跡する。
突拍子もない設定である。その割に、意外性とか人を食ったところが全くといっていいほどないという、何とも変わった小説。
繰り広げられる追跡行はヴェトナムからパリへ(脱走兵と目されて)行くのだから、もちろん何度も波乱があるのだが、その波乱が何とも現実的というかありきたりというか常識の範疇に収まるものばかり。
並行して語られるヴェトナムでの戦争体験も、過激さとは程遠い。ダラダラと続く退屈な日々、かといって全く戦闘がないわけでもなく戦死者は出る。何だかこれもリアルすぎるくらいにリアリティに富んでいる。
語り口も平明な口語調。どこをとっても尖ったところのない小説。
でも退屈はしない。妙な小説である。
もっと奇抜に、遥か彼方まで跳躍していける素材を用いながらあえてそうしない。一風変わった味わいの「フツーの小説」。
蛇足だが、帯の文句に「驚愕の結末」ってあったんで期待していたんだけど・・・・。大方の読者の想定の範囲内だと思うんだが。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
アメリカ・カナダ文学
- 感想投稿日 : 2011年3月5日
- 読了日 : 2011年3月5日
- 本棚登録日 : 2011年3月5日
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